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近畿地方各府県の森林生産力を見て行こう11

 近畿地方の2府5県の内、MTANAKA方式都道府県森林生産力分類2017の分類は次の様である。分類2-2には三重県、兵庫県、和歌山県の3県、分類3には奈良県と京都府の1府1県、分類5には大阪府と滋賀県の1府1県が分類された。近畿地方の全府県共栽培きのこ類生産額は20億円より少ない。分類2の3県は栽培きのこ類生産が少ないが、木材産出量が20万㎥以上50万㎥未満の県で分類2-2に入り、分類3は栽培きのこ類生産額が少なく木材産出量が10万㎥以上20万㎥未満の府県、分類5はどちらも少なく特に木材産出量が10万㎥未満の府県である。近畿地方は歴史のある林業地が多い。2017年の木材産出額の多い順にそれぞれの県の特徴を紹介していく。

 なお、表3-2に2017年の中部地方各県の森林生産力に関するデータを掲載している。

表3-2 2017近畿地方森林生産力データ

 

 

 

 

 

 

3-2-1 三重県

[1] 三重県の森林
 三重県の森林面積は全国24位の37.2万haである。森林率は全国29位の64.5%で森林率は日本全体の森林率より少し小さいが森林県である。そして三重県の人工林面積は全国16位の23.0万ha、人工林率は全国平均が40.7%のところ、全国5位の61.8%と高くなっている。

 隣県の吉野林業に接し、また尾鷲林業は有名である。人工林率の高さから、三重県は長年植林に力を入れてきたので今の状態があると考えられる。

[2]三重県の林業産出額と栽培きのこ類生産について
 三重県の林業産出額は2016年53.1億円(全国27位)、2017年54.3億円(全国27位)であった。全国の1%程度である。

 また三重県の栽培きのこ類生産額は2016年16.8億円(全国24位)、2017年17.3億円(全国23位)である。三重県は栽培きのこ類生産を行っているが、あまり多いとは言えない。地元を中心に周辺地域で消費している状態と考えられる。

 そして、三重県の林業産出額に対し木材生産産出額と栽培きのこ類生産額の占める割合は木材生産の方が多く、木材生産産出額が2016年68.0%、2017年66.7%であった。

[3]三重県の木材生産
 三重県の木材生産の特徴はすぎとひのきの生産が多いことである。三重県の木材生産の産出額は2016年36.1億円(全国18位)、2017年36.2億円(全国20位)で、木材生産量は2016年22.9万㎥(全国24位)、2017年24.5万㎥(全国25位)であった。2017年の素材生産の樹種を紹介すると、すぎが12.6万㎥、ひのきが10.6万㎥、あかまつくろまつ、その他針葉樹と続いている。

 三重県の人工林面積は全国16位の23.0万haと多いことを紹介したが、2017年の人工林面積当たりの生産量は1.14㎥/haである。全国平均0.85㎥/haより大きい。

 三重県はひのきの生産量が多く、小規模な木材生産の産業を維持していると言える。既述のように材積成長量との関係と考えると、三重県のこの数字は、資源的にはまだ十分に余力のある状態と言える。林業の歴史ある三重県は技術レベルも高く、長年大学とも連携している。今後森林資源調査の結果に基づく三重県の計画を立案し、計画的に進めると増産できる可能性は高い。

 しかし、大都市名古屋市のある愛知県に隣接し、工業も盛んな歴史もあり、森林の置かれる立場はあまり強くはないと考えられる。紀伊半島は森林が多く、その活用については都市とのつながりの好位置を活かし、三重県が中心県になって推進して欲しいところである。

(続く)

  • 2020.08.13
  • 田中

各都道府県の森林生産力~改めて各県の森林生産力を見て行こう10

3-1-10 中部地方の各県の木材生産

[1]中部地方の森林の活用と栽培きのこ類生産
 中部地方の9県についてデータを中心に森林生産力を見てきた。中部地方のどの県も長年それぞれの森林の有効活用を目指してきた。現在木材生産量こそ少ないが、各々の経済条件の中で自県の強みを活かしている所が多い。

 2017年の数字で話を進めるが、既に紹介したように、林業産出額全国1位の長野県、3位の新潟県、そして10位の静岡県がある。3県とも栽培きのこ類生産での上位の県である。栽培きのこ類生産額の全国1位の長野県、2位の新潟県、6位の静岡県である。栽培きのこ類生産は森林の活用としてひとつの産業形体と考えられる。全国的に多種類のきのこが栽培されているが、大都市の消費地が近い地の利を活かし産業を育ててきた結果である。日本人の食文化に根ざしたきのこの生産を今後も継続することを期待したい。

[2]中部地方の木材生産
 他方中部地方各県の木材生産量はあまり多いとは言えない。木材生産産出額を見ると、2017年全国13位の岐阜県、15位の長野県が多い県である。木材生産量でも長野県(全国14位)、岐阜県(全国16位)と生産しているが、50万㎥未満とあまり多いとは言えない。

 また継続的な木材生産の基となる人工林面積は、全国3位の長野県が44.5万ha、全国6位の岐阜県が38.5万ha、全国9位の静岡県が28.0万haと多い。仮に毎年5㎥/haの成長を想定すると、この3県はそれぞれ140万㎥から200万㎥の生産ができる可能性がある。現在の森林資源では質量の両面を考えると難しい場合があるが、潜在的には地域としての森林生産力は高められる可能性があると期待できる。

 しかし、現状はその実現に遠いのはなぜかと考えると、中でも限られた条件である人材を増やすことは簡単ではないということである。立地条件の良さと他産業が盛んなことから、短期間での木材産業の成長は難しい現状がある。車道網整備が進んだ現在は機械化による代替は可能であるが、農業他の産業と違い毎回作業場所が異なる木材生産は技術的にその推進が他産業ほど順調にはできないのではないだろうか。

[3]樹種について

ひのきの生産
 長野県と岐阜県の木材生産産出額と木材生産量の全国での順位が逆転している。これは地域によって気象条件等が違い、生育できる樹種が異なっている。中部地方の各県の内、岐阜県、静岡県はひのきの生産量が多く15万㎥程度、長野県、愛知県はそれに比べると少ないが5万㎥程度、その他山梨県、石川県が1万㎥程度となっている。日本ではひのきはすぎよりも珍重されてきた。そのため木材価格が高かったので植えられる場所にはひのきを植えようと先人たちが努力してきた。その結果育った木を今日伐って利用できている。木材の単価が高ければ少量の伐採でもコストに見合うことから、各地で作業単位が少量のひのきの産出が行われている。

 岐阜県と静岡県は現資源量でも木材生産に有利と言える。このようにひのきが生産できる地域では、小さな単位の生産ができる条件があり、ひのきの流通加工そして消費は大切にしたい。逆に地域全体で大規模な産業を開発したい場合にはひのきを区別しそれ以外のところでの推進が考えられる。ひのきの産地とそれ以外では条件が異なるということである。ひのきの単価も下がった現状ではあるが、長年価値の高いと評価されるひのきの流通は、今後も現状を保持して消費者につないで活用してくれる工務店等を広げていくことが木材を評価し価格を支える方法ではないかと考えられる。

すぎ、からまつ、その他の樹種
 すぎは古来我が国の建築を担ってきた。また北海道南部から九州まで広く自生している。中部地方では、岐阜県と静岡県は20万㎥前後の産出量があり、他県も生産している。あかまつくろまつは長野県が5.8万㎥、山梨県1.9万㎥、富山県、石川県と続いている。量的に少ないあかまつくろまつについては、松くい虫の被害も考慮する必要があるが、マーケティングを積極的に行うことで、需要拡大につなげることも考えられている。

 からまつは長野県の生産量が24.7万㎥(全国3位)と多く、中部地方では山梨県と岐阜県が1~3万㎥産出している。長野県ではすぎの植えられない寒冷地にからまつが植えられたが、樹齢が高くなり材質がようやく認められて、流通が促進されてきている。

 分類2の3県のうち、長野県と岐阜県はかなり生産量が多くもう少しで50万㎥の線を超えると分類1になる可能性がある。木材サプライチェーンの核になれる可能性があるが、前から述べているように簡単に人を増やせないことから、この両県の協力体制も大いに考えられる。また、静岡県は分類2であるが他産業が盛んなため木材生産に多くの力の投入は難しいのではないかと考えるが、ひのきを中心に愛知県、岐阜県、近畿地方、関東地方と協力の輪を広げての地道な発展が現実的のようである。

中部地方の協力の可能性
 中部地方の木材生産に関しては分類3、分類4の6県は独自で地道に続けていくと考えるが、道路網が整備された今日は、隣県との協力によって、近隣の消費者の住宅をはじめ産業への木材供給体制を作ることで、木材の有効活用につなげられると考えられる。

品ぞろえのために
 ある程度の品ぞろえがなければ今日のサプライチェーン構築は難しく、旧来の時間をかけての木材生産流通加工後の提供では他地方の木材や、木材以外の資材との競争に負けてしまう現実がある。簡単なことではないがそこでは情報技術を活用したマーケティングを推進させたいところである。

 山梨県は現在の木材産出量は多くはないが、大消費地に近い立地である。それを活かしたマーケティングを行い、他県との協力する体制を作ることも考えられる。

 日本海側の新潟県、富山県、石川県、福井県はそれぞれ厳しい環境の中、木材生産を続けている。安価ではあるが、バイオマスエネルギーとしての木材の活用も近年可能になってきた。そこで独自の産業の発展を志向することを考えるが、資源量を人工林面積で類推すると、長期には他県との協力を基に発展を目指すのがお互いの為になるのではないかと考えられる。

 現在は道路網があり、効果的な林業機械が出現し、さらにインターネットによる広域での情報の活用が可能になった。それらの技術を使い木材生産の流通加工や市場としての品ぞろえを整え、需要に応えられる産業作りが可能になっていると考えると、人材不足を補いながらの近隣地域での協力体制を作ることで発展ができるのではないかと期待するところである。

 MTANAKA方式都道府県森林生産力分類2017の表は近隣県との協力体制を築くための参考にしてもらいたいと考えている。ここに、MTANAKA方式都道府県森林生産力分類2017を再掲示しておく。

再掲の表ー4MTANAKA方式都道府県森林生産力分類2017

再掲の表ー4MTANAKA方式都道府県森林生産力分類2017

  • 2020.07.23
  • 田中

各都道府県の森林生産力~改めて各県の森林生産力を見て行こう9

3-1-9 愛知県

[1]愛知県の森林
 愛知県の森林面積は全国37位の21.8万haである。そして森林率は全国41位の42.2%である。濃尾平野が広がり農業や工業等の産業が盛んであることから、全国の森林率67.2%より低くなっている。愛知県の人工林面積は全国30位の14.0万ha、人工林率は全国平均が40.7%のところ、全国3位の64.4%と高くなっている。愛知県は歴史が長く、農業が盛んであり、人工林率から見ると植林には力を入れてきたので今の状態があると考えられる。

[2]愛知県の林業産出額と栽培きのこ類生産について
 愛知県の林業産出額は2016年29.3億円(全国31位)、2017年28.9億円(全国34位)であった。全国の0.6%程度である。

 また愛知県の栽培きのこ類生産額は2016年10.2億円(全国33位)、2017年10.1億円(全国34位)と少ない。愛知県は農業生産が盛んであり、技術力があるが、栽培きのこ類生産をあまり行っていないことがわかる。

 愛知県の林業産出額に対し木材生産産出額と栽培きのこ類生産額の占める割合は木材生産の方が多く、木材生産産出額が2016年64%、2017年61%であった。人口も多く、農業が盛んな愛知県では森林内や側での栽培きのこ類生産はあまり積極的ではないようである。

[3]愛知県の木材生産
 愛知県の木材生産の木材生産の産出額は2016年18.8億円(全国30位)、2017年17.6億円(全国31位)で、木材生産量は2016年13.1万㎥(全国34位)、2017年13.3万㎥(全国34位)と多いとは言えず変化もない状態である。2017年の素材生産の樹種を紹介すると、すぎ7.3万㎥、ひのき5.1万㎥、あかまつくろまつ、その他であった。小規模の生産が続けられていると考えられる。

 愛知県の人工林面積は全国30位の14.0万haと紹介したが、2017年の人工林面積当たりの生産量は0.95㎥/haである。全国平均0.85㎥/haより大きいが、木材の蓄積量がかなり増加している状況と考えられる。総合的な森林生産力の現状は小さいが、人工林面積が広いことと、森林の車道密度が整備されていることから、周辺の県と協力すると木材を生産し、森林整備を推進できる可能性がある。

 愛知県は大都市を抱えていることから、観光やボランティア活動や環境教育の場として森林を役立てていると考えられる。

  • 2020.07.20
  • 田中

各都道府県の森林生産力~改めて各県の森林生産力を見て行こう8

3-1-8 山梨県

[1] 山梨県の森林
 山梨県の森林面積は全国27位の34.8万haであるが、森林率は全国5位の77.9%と高い森林県である。そして山梨県の人工林面積は全国29位の15.4万ha、人工林率は全国平均が40.7%のところ、全国25位の44.1%と比較的高い。

 山梨県の森林は他県と歴史が異なり、明治天皇が県民の災害の窮地を救うために御料林を御下賜の後、現在の県有林となっている。県有林は森林面積の46%である。山梨県は果物を中心に農業が盛んであり技術力はある。しかし首都圏に近い立地から森林の産業への関心が近年高まっていないように感じられる。

 他方、首都圏近郊の観光県であることから、森林の景観は大切にされている。また、東京都の水源林があり、その役割は大きい。

[2]山梨県の林業産出額と栽培きのこ類生産について
 山梨県の林業産出額は2016年13.8億円(全国41位)、2017年14.5億円(全国42位)であった。全国の0.3%程度である。

 また山梨県の栽培きのこ類生産額は2016年2.9億円(全国44位)、2017年2.9億円(全国43位)で金額の変化は少ない。山梨県は栽培きのこ類生産を行っているが、あまり多くはない。

 山梨県の林業産出額に対し木材生産産出額と栽培きのこ類生産額の占める割合は木材生産の方が多く、木材生産産出額が2016年79%、2017年77%であった。

[3]山梨県の木材生産
 山梨県の木材生産産出額は2016年10.9億円(全国35位)、2017年11.1億円(全国36位)で、木材生産量は2016年16.5万㎥(全国31位)、2017年16.5万㎥(全国30位)と変化も少なく絶対量も多いとは言えない。2017年の素材生産の樹種を紹介すると、広葉樹6.1万㎥、からまつ、すぎ、あかまつくろまつ、ひのき、その他が1~3万㎥であった。大量に産出するのではなく、小ロット生産が読める数字である。

 山梨県の森林を見学するとこのように産出量が少ないとは思わなかったが、急斜面の森林が多く、東京都の水源林を担っている等の県の事情が反映してると考えられる。データを見ると、立地が良いことは森林管理にとってあまり良いことではないのかと考えてしまう。

 山梨県の人工林面積は全国29位の15.4万haと紹介したが、2017年の人工林面積当たりの生産量は1.07㎥/haである。全国平均0.85㎥/haより大きい。山梨県は小規模ながら独自の木材生産の産業を維持していると言える。既述のように材積成長量との関係と考えると、山梨県のこの数字はまだ十分に余力のある状態と言える。森林の成長量を考え、森林整備のために更新を行いたいところである。現在の森林生産力は決して多くはないが、産出している樹種が多種類であることから、今後も小規模な生産が行われると考えられる。森林資源調査を行い、それに基づく山梨県の計画を立て計画的に進めると持続的に増産できると可能性は大きい。首都圏に近いことから他産業との競合に苦戦している模様である。

 観光に森林を生かしていると訪問時いつも思うことである。そして山梨県では「森林文化の森」等を企画している。

  • 2020.07.19
  • 田中

各都道府県の森林生産力~改めて各県の森林生産力を見て行こう7

3-1-7 福井県

[1] 福井県の森林
 福井県の森林面積は全国30位の31.2万haである。森林率は全国11位の74.5%で森林率から見て森林の多い森林県である。福井県の人工林面積は全国34位の12.4万ha、人工林率は全国平均が40.7%のところ、全国34位の39.9%と平均に近いと言える。水産業、農業が盛んである。関西圏に近い立地のため歴史の長さが感じられる。そして観光県であることから、森林の景観は大切にされたのであろうと考えられる。

[2]福井県の林業産出額と栽培きのこ類生産について
 福井県の林業産出額は2016年12.1億円(全国42位)、2017年14.8億円(全国41位)であった。全国の0.3%程度である。

 また福井県の栽培きのこ類生産額は2016年3.9億円(全国40位)、2017年5.3億円(全国38位)と少ない。福井県は栽培きのこ類生産を行ってはいるが、地元を中心に消費していると状態と考えられる。

 そして、福井県の林業産出額に対し木材生産産出額と栽培きのこ類生産額の占める割合は木材生産の方が多く、その割合は木材生産産出額が2016年66.9%、2017年62.8%であった。

[3]福井県の木材生産
 福井県の木材生産の特徴はすぎを主に生産している。福井県の木材生産の産出額は2016年8.1億円(全国38位)と少なかったが、2017年9.3億円(全国38位)と少し増加した。そして福井県の木材生産量は2016年8.8万㎥(全国38位)、2017年10.4万㎥(全国38位)と増加している。2017年の素材生産の樹種を紹介すると、すぎが9.3万㎥、その他ひのき、広葉樹、あかまつくろまつが少しずつであった。

 2016年は木材生産量が10万㎥未満であったため、MTANAKA方式都道府県森林生産力分類2016では分類5に入っていたが、2017年は分類3に入れることができた。

 福井県の人工林面積は全国34位の12.4万haと少ないことを紹介したが、2017年の人工林面積当たりの生産量は0.83㎥/haで、全国平均0.85㎥/ha程度であった。既述のように材積成長量との関係と考えると、福井県のこの数字は、木材生産だけでなく、環境の整備のために森林管理が重要である。

 福井県はあまり森林を活用していない状態と言える。広域の木材関係の産業を作ることは難しいが、現在の資源を活用し、周辺の木材生産が盛んな県と協力して、産業として森林の整備ができる可能性があると考えられる。

  • 2020.07.18
  • 田中

各都道府県の森林生産力~改めて各県の森林生産力を見て行こう 6

 中部地方にはMTANAKA方式都道府県森林生産力分類2017の分類3の県が4県ある。それは、石川県、福井県、山梨県、愛知県である。分類3は栽培きのこ類生産額が年に20億円未満で、木材生産量が10万㎥以上20万㎥未満の県である。それぞれの県の特徴を紹介していく。

 なお、表3-1に2017年の中部地方各県の森林生産力のデータを掲載している。

3-1-6 石川県

[1] 石川県の森林
 石川県の森林面積は全国31位の28.6万haである。森林率は全国22位の68.3%で森林率は日本全体の森林率より少し高い森林県である。そして石川県の人工林面積は全国37位の10.2万ha、人工林率は全国平均が40.7%のところ、全国39位の35.5%と比較的低い。農業が盛んであり、長い歴史ある石川県は「あて」の産地として有名である。気候的に植林の難易度は高いが、人工林率から見ると植林には力を入れてきたので今の状態があると考えられる。

 観光県であることから、森林の景観は大切にされたのであろう。

[2]石川県の林業産出額と栽培きのこ類生産について
 石川県の林業産出額は2016年27.7億円(全国34位)、2017年30.8億円(全国33位)であった。全国の1%に満たない。

 また石川県の栽培きのこ類生産額は2016年12.1億円(全国30位)、2017年14.2億円(全国27位)であった。石川県は栽培きのこ類生産を行っているが、あまり多くはない。地元を中心に周辺地域で消費している状態と考えられる。

 そして、石川県の林業産出額に対し木材生産産出額と栽培きのこ類生産額の占める割合が均衡し、木材生産産出額が2016年55.2%、2017年50.0%であった。

[3]石川県の木材生産
 石川県の木材生産の特徴はすぎを主に生産していることである。石川県の木材生産の産出額は2016年15.3億円(全国32位)、2017年15.4億円(全国32位)で、木材生産量は2016年13.4万㎥(全国33位)、2017年14.1万㎥(全国32位)であった。2017年の素材生産の樹種を紹介すると、すぎが9.2万㎥、その他広葉樹、ひのき、あかまつくろまつ、その他針葉樹と続いている。

 石川県の人工林面積は全国37位の10.2万haと少ないことを紹介したが、2017年の人工林面積当たりの生産量は1.38㎥/haである。全国平均0.85㎥/haより大きく、石川県は小規模ながら木材生産の産業を維持していると言える。既述のように材積成長量との関係と考えると、石川県のこの数字は、まだ十分に余力のある状態と言える。現在の森林生産力は多くはないが、森林資源調査を行い、それに基づく石川県の計画を立て計画的に進めると増産できる可能性は高い。

 しかし、人工林面積の大きさから、大規模産業を目指すのは難しい。様々な交通機関と情報を駆使して隣県とも連携することで、今後の産業の中心を担ってほしいところである。

  • 2020.07.17
  • 田中

第3章 各都道府県の森林生産力~改めて各県の森林生産力を見て行こう 5

3-1-5 富山県
[1] 富山県の森林

 富山県の森林面積は全国32位の28.5万haである。森林率は全国25位の67.1%であり、森林率から見ると隣県の新潟県同様日本の平均並みに森林は多い。しかし富山県の県土面積は全国33位の42万haと小さいため、森林面積そのものは少ない。一方、富山県の人工林面積は全国42位の5.5万ha、人工林率は全国平均が40.7%のところ、全国45位の19.1%の低さである。新潟県同様に日本海に面した気候の厳しさから造林が成功せず人工林面積が少なくなったのではないだろうか。米作りをはじめ農業の盛んな富山県は新潟県と同様に栽培きのこ類生産が盛んになってきている。

[2]富山県の林業産出額と栽培きのこ類生産について
 富山県の林業産出額は2016年24.4億円(全国36位)、2017年34.2億円(全国31位)であった。全国の1%弱である。

 富山県の栽培きのこ類生産額は2016年全国22位の18.6億円、2017年全国20位の28.4億円であった。2017年に大きく生産額を伸ばした県である。MTANAKA方式都道府県森林生産力分類2016では分類3であったが、栽培きのこ類生産額が20億円を大きく超え、MTANAKA方式都道府県森林生産力分類2017では分類4になっている。

 富山県では多種類の栽培きのこ類生産を行っているが、どれも未だ少ない生産量である。次に紹介する木材生産量についても多くないため、林業産出額に対する栽培きのこ類生産額の割合が多く、2016年は76%、2017年は83%になっている。

 富山県は農業技術があり、栽培きのこ類生産額の1位の長野県,2位の新潟県が隣県の立地であることから、今後も発展する可能性がある。

 新潟県と共に木材生産量が少ないため分類4の代表県である。

[3]富山県の木材生産
 富山県の木材生産の産出額は2016年5.8億円(全国40位)、2017年5.6億円(全国41位)で、木材生産量は2016年6.4万㎥(全国41位)、2017年5.8万㎥(全国41位)と少ない。富山県の樹種は新潟県と同じくすぎが多い。富山県には昔電柱用のぼかすぎが生産されていた地域もある。

 富山県の人工林面積は既に紹介したように全国42位の5.5万haと広いとは言えない。しかし、2017年についての人工林面積当たりの生産量は1.05㎥/haである。全国平均0.85㎥/haよりは大きく、岐阜県の1.09㎥/haと近くなっている。富山県の木材生産は量的には目立たないが、木材生産については着実に行っている県と言える。またその生産量はまだ少なく、今後資源量調査を行うことで、増産の余力は十分に考えられる。

 富山県は小規模な産地として木材生産が続いている現状である。人工林面積を考えると県内のみでの大規模産地を目指すには難しいが、交通網の発達した現在は、隣県と協調することで発展できると考えられる。

 富山県はMTANAKA方式都道府県森林生産力分類2017では栽培きのこ類生産額の多い分類4の4県のひとつである。木材生産の面では少ない県と言えるが、富山県は地道に森林を活用していると言える。そして森林生産力は多面的に捉える必要があると考えられる。

  • 2020.07.05
  • 田中

第3章 各都道府県の森林生産力~改めて各県の森林生産力を見て行こう 4

 中部地方では分類4に新潟県と富山県があるが、林業産出額が多い新潟県があるので、分類4の2県の話を先にしよう。

3-1-4 新潟県
[1] 新潟県の森林

 新潟県の森林面積は全国6位の85.5万haである。森林率は全国23位の68.0%であり、森林は日本の平均並みに多い。一方、新潟県の人工林面積は全国27位の16.2万ha、人工林率は全国平均が40.7%のところ、全国46位の18.9%の低さである。日本海に面した気候の厳しさから造林が成功せず人工林面積が少なくなったのではないだろうか。他方、米作りをはじめ農業の盛んな新潟県は栽培きのこ類生産が盛んな県となっている。

[2]新潟県の林業産出額と栽培きのこ類生産について
 新潟県の林業産出額は2016年2017年共全国3位であった。全国の約9%を占め、2016年は409億円、2017年は414億円であった。隣県の長野県と同様に、林業産出額に対し栽培きのこ類生産額の占める割合が多く、2016年2017年共97%であった。

 新潟県の栽培きのこ類生産額は2016年2017年共全国2位で、2016年399億円、2017年402億円であった。前に紹介したが、新潟県は特にまいたけ生産が多く全国1位、ぶなしめじ(全国2位)、エリンギ(全国2位)の産出額が多い。その他えのきだけ(全国2位)、なめこ(全国3位)も生産している。他にひらたけの採取は2017年全国1位である。

 農業技術があり、消費地が近いという立地条件を活かし、良質な木材生産を望めない気候を考えると、長年森林の活用として栽培きのこ類生産の経営や技術を培ってきたと考えられる。そして生産は確固たるものと期待できる。

 新潟県は木材生産量が少ないため分類4としたが、分類4の代表県である。森林の活用としてはひとつの「産業形体」を形作っている。地域の人々の長年の努力の結果と考えられる。

[3]新潟県の木材生産
 新潟県の木材生産の産出額は2016年10.5億円(全国37位)、2017年11.1億円(全国36位)で、木材生産量は2016年10.7万㎥(全国36位)、2017年10.5万㎥(全国37位)と少ない。新潟県の樹種はすぎが多く2017年の生産量は9.6万㎥、他広葉樹やあかまつくろまつである。

 人工林面積は全国27位16.2万haと広くないが、2017年の人工林面積当たりの木材生産量は0.65㎥/haである。これは既述のように材積成長量との関係を見ることができる。森林の木々は毎年成長するため、災害等がなければ人工林を放置すると材積の蓄積量は増加を続ける。その時、木材の質の面では計画した育林体系の目標とするところと乖離してしまう。木材は期待するものと変わってしまってもおかしくないと言える。それだけでなく、林内は過密な状態となり、ひと頃言われた下木層の無い「緑の砂漠」状態の林床になり、土砂崩れ等の災害の危険が増す状態になる。

 そこで、今日的な地域の目標林型を考えた施業を行うことが必要になる。健全な森林を育成することが地域の環境には大切である。そのように考えると、まさしく森林環境税等の施行は地域に合った工夫のし所である。木材生産に厳しい気候条件の地域では、良質な木材の育成を目指すだけでなく、県として森林育成を考えると、環境も良くなり農業他の産業に資する森林の在り方を模索できると考えるがいかがであろうか。現在は良質材に加え、極端な話バイオマスエネルギーとしての活用も可能になってきている。

  • 2020.07.03
  • 田中

各都道府県の森林生産力~改めて各県の森林生産力を見て行こう 3

 表3-1に2017年の静岡県の森林生産力のデータを掲載している。

3-1-3 静岡県
[1] 静岡県の森林

 静岡県の森林面積は全国16位の49.7万haである。森林率は全国31位の63.9%であり、森林は県北部に多い。そして静岡県の人工林面積は全国9位の28.0万ha、人工林率は全国平均が40.7%のところ、全国13位の56.4%の高さである。絶対値として人工林面積の大きい森林県である。農業と共に森林が整備された歴史の結実を見ることができる。

[2]静岡県の林業産出額と栽培きのこ類生産について
 静岡県の林業産出額は2016年2017年共全国10位であった。全国の2%,3%を占め、2016年は114億円、2017年は116億円であった。隣県の長野県と同様に、静岡県は林業産出額に対し栽培きのこ類生産額の占める割合が多く、2016年68.5%、2017年67.3%であった。

 静岡県の栽培きのこ類生産額は2016年2017年共全国6位の78億であった。安定していると言える。中部地方には栽培きのこ類生産額が上位の長野県、新潟県、静岡県がありその1つである。静岡県の栽培きのこ類生産はまいたけ(全国2位)が多い特徴がある。その他静岡県は竹炭が全国2位、たけのこが全国5位の生産がある。大消費地が近く、気候に恵まれていることからこれらの生産は手堅いものと期待できる。

 木材生産量については次に紹介するが、1年の生産量が50万㎥未満で、MTANAKA方式都道府県森林生産力分類2016も同2017も分類2-1に入っている。

[3]静岡県の木材生産
 静岡県の木材生産の特徴はすぎとひのきの素材を主に生産している。岐阜県と類似している。木材生産の産出額は2016年35.7億円(全国19位)、2017年37.4億円(全国19位)で、木材生産量は2016年35.2万㎥(全国20位)、2017年35.6万㎥(全国21位)であった。ひのきの生産量は2016年16.2万㎥、2017年16.4万㎥であるが、2017年は全国5位で全国の6.0%を出材している。2017年のひのきは、5位の静岡県と6位の岐阜県で全国の11.5%が生産されている。

 2017年に静岡県で生産された樹種別材積を紹介すると、すぎが18.0万㎥、既述のひのき16.4万㎥、広葉樹0.7万㎥、その他0.5万㎥であり、すぎとひのきが多い。

 人工林面積は全国9位と広いが、2017年の人工林面積当たりの生産量は1.27㎥/haである。これは既述のように材積成長量との関係を見ることができる。静岡県のこの数字は、全国平均0.85㎥/haよりは大きいが、まだ十分に余力のある状態と言える。また、公道を含めた林内道路密度は17.4m/haと整備されている(1)。森林資源調査を行い、それに基づく計画を立て計画的に森林経営を行えば、十分に持続可能な発展が望めるところと考えられる。しかし現在の静岡県では人材その他の要素が他の産業に行っていると考えられる。付加価値のある新しい木材利用などの試みがあり、それが実ると状況は変わる可能性がある。地域の地元の方の地道な努力が実るのをせかさずに期待したい。

 年間の素材生産量がそれほど多くないため、分類2ではあるが、他産業との競争を考えると、木材生産については県内だけでなく隣県と協力することで、規模拡大など発展の模索ができるのではと考えられる。

参考文献(1)静岡県:平成29年度静岡県森林・林業統計要覧

  • 2020.06.27
  • 田中

各都道府県の森林生産力~改めて各県の森林生産力を見て行こう 2

中部地方の県別森林生産力

 表3-1は中部地方の9県の2017年の森林生産力に関する数字である。これはMTANAKA方式都道府県森林生産力分類2017を作成するために使っている。2016年についても同様に表を作成できるが、その内容については説明の中で触れていく。表3-1では、人工林面積、林業産出額、木材生産額、栽培きのこ類生産額、木材の素材生産量のそれぞれのデータと全国順位、そしてMTANAKA方式都道府県森林生産力分類2017の分類を掲載している。表3-1の右の列のように、中部地方の9県の内、分類2-1が3県、分類3が4県、分類4が2県である。
表3-1 2017年中部地方の県別森林生産力データ

表3-1 2017年中部地方の県別森林生産力データ

表3-1 2017年中部地方の県別森林生産力データ

参考文献:林野庁:森林林業統計要覧2018、2019.

3-1-2 岐阜県
[1] 岐阜県の森林は大きい

 岐阜県の森林面積は大きい。全国5位の86.2万haである。森林率は全国2位の81.2%と高い。

 そして岐阜県の人工林面積は全国6位の38.5万haと多く、人工林率は全国平均が40.7%のところ、全国23位の44.6%である。造林が可能でない条件の標高の高い場所や寒冷地の割合が多いと予想される。長野県と比べると人工林率は4%程度高い。岐阜県の面積、森林面積、人工林面積のどれも長野県に比べて少し小さいが、絶対値としては森林面積そして人工林面積の大きい森林県である。

[2]岐阜県の林業産出額は木材生産の割合が大きい
 岐阜県の林業産出額は2016年2017年共全国15位であった。全国の約2%を占め、2016年は87億円、2017年は91億円であった。隣県の長野県との違いは、林業産出額に対し木材生産の占める割合が2016年65%、2017年63%と多い。

 栽培きのこ類生産は2016年2017年共全国19位の30億、31億円であった。中部地方には栽培きのこ類生産額が上位の長野県、新潟県、静岡県があるが、岐阜県と富山県(全国20位)も栽培きのこ類生産が盛んと言える。岐阜県の栽培きのこ類生産は生産額の多い隣県に比べると少ないが、地域の産業としては重要である。岐阜県は大消費地に近く、交通網の整備が進んでいる今日は、隣県に協力することでさらに発展の可能性は高いと言える。

 木材生産量については次に紹介するが、1年の生産量が50万㎥未満で、MTANAKA方式都道府県森林生産力分類2016も同2017も分類2-1に入っている。

[3]岐阜県の木材生産
 岐阜県の木材生産の特徴はすぎとひのきの素材を主に生産している。木材生産の産出額は2016年56.5億円(全国12位)、2017年57.4億円(全国13位)で、木材生産量は2016年38.9万㎥(全国16位)、2017年41.8万㎥(全国16位)であった。産出額は長野県よりも大きいが、材積では長野県よりも小さくなっている。それは生産している樹種が異なることからと考えられる。ひのきの生産量は2016年13.9万㎥、2017年15.3万㎥であるが、2017年は全国6位で全国の5.6%を出材している。長野県はからまつが多いことと対照的である。

 2017年に岐阜県で生産された樹種別材積を紹介すると、すぎ22.4万㎥、既述のひのき15.3万㎥、からまつ1.6万㎥、広葉樹1.2万㎥、その他1.3万㎥であり、ひのきが多いことは特徴であるが、県内ではすぎの生産量の方が多くなっている。

 人工林面積は全国6位と広いが、2017年の人工林面積当たりの生産量は1.09㎥/haである。これは既述のように材積成長量との関係を見ることができる。岐阜県のこの数字は、全国平均0.85㎥/haよりは大きいが、まだ十分に余力のある状態と言える。森林資源調査を行い、それに基づく計画を立てたいところである。岐阜県の気候からは計画的に森林経営を行えば、更なる発展が望めると考えられる。しかし現状では人材その他の要素が他の産業に行っていると言える。

 岐阜県の強みとして岐阜県立森林文化アガデミーが有名である。森林をフィールドとする専門学校で人材を育てるしっかりした教育機関となっている。人材育成と共に、ICT技術活用の研究も盛んに行われている。岐阜県各地には篤林家である指導林家が大勢いることから、協力を得ての研究も盛んである。さらに森林組合はじめ多くの組織が活発に活動している。

 人工林が多いことは林業の歴史が長く、先人の努力の賜物である。すぎ、ひのきを中心に今後も地域の方が中心になって有効活用することが地域の森林の活用つながると考えられる。

 年間の素材生産量が50万㎥未満で分類2となったが、現在は広い県内外に道路網が開設されたことから、隣県との協力も可能となっている。人材その他の条件を大きく増やすことは現状では難しいが、分類2の長野県、静岡県や他県と協力することで、さらに発展し分類1-1になる可能性がある。

  • 2020.06.21
  • 田中

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