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人工林と人工林面積の意義

日本は森林率が高い森林国

 日本は森林国である。国土面積の67%が森林である。温帯の森林が育つ環境に恵まれている。日本の47都道府県には森林が多いが、各都道府県の面積が様々なように森林面積も同様で、森林面積が最大の北海道は最小の香川県の42倍弱であり、簡単に比較できない。

 全国的に見ると、日本の国土面積は約3,730万ha、その67%が森林として分類され、森林面積は約2,505万ha、その森林面積の内の人工林面積は約1,020万haである。森林率と同じようによく人工林率と言われるが、それは人工林面積の森林面積に対する割合で、全国を対象にすると現在40.7%である。

人工林は歴史の結実

 日本は傾斜のある土地が多く、平地を利用して田畑として利用してきた。残った所が森林になってきたが、20世紀後半ブルドーザなどの機械により、傾斜の緩な土地も整地して利用可能になった。そして半世紀が経過し、利用できなかった所が現在も森林として残っている。また、山の高い所まで開墾し、田畑として使われた後、今では森林に戻っている所もある。

図ー3 日本の国土の割合

図ー3 日本の国土の割合

 日本全体を見ると、図-3のように、国土の33%は森林以外の用途に使われている。昔の農地は都市になり、工場用地になり、そして農業その他に利用されている土地である。その残りが森林である。先の森林率は森林面積を国土面積(県の面積)で除した値で、これは比較可能である。

 全国の森林率は先の67.16%であるが、都道府県別の値を見ると、最高の高知県は83.76%、最低の大阪府は30.03%であり、高い程森林の割合が多いことはわかる。各都道府県には色々な条件があり、一律に森林になっているわけではないのである。

 森林には天然林と人工林の区分がある。人が人為的に植林して育てた森林を人工林と言い、天然林あるいは天然生林は自然の力で成林した森林と言える。農業が産業の中心であった時代には、里山から柴や有機肥料などの材料を得ていた。科学肥料が出てくるまでは、農村は里山と密接な生活をしていた。また余力がある時に将来の出費や木材の必要時のために植林してきた。さらに規模を拡大した吉野林業のように育林業が発展した地域も多い。その歴史の長い地域では造林が進み人工林が増加している。人工林面積は短期間で高めることはできない数字と言える。図-3のように全国的に見ると、国土の27%が人工林になっている。この率は、先の人工林率とは異なるので注意が必要である。

人工林は先人の努力の賜物

 現在の人工林はどのようにして作られてきたのか。挙げてみよう。全国各地同じではない話である。

1)森林は大切な農業の資源を与えてくれる所であり、吉野林業のように先進的な地域では苗木を植え、人工林を増やし、育林業として木を育ててきた。その技術は日本全国に伝えられ見習った地域も多い。

2)農業のために植林を行った地域もある。地域で共同利用する入会林の中には伝統的に手入れを実施してきた所もある。

3)各地で、木を伐採した後、跡地が再生するようにと苗を植えた所もあると聞く。

4)商売で成功した資金を元手に山林を購入し、造林を積極的に行った山林家も各地に存在し、篤林家、指導林家として技術を地域に伝えている。

5)第2次世界大戦後、はげ山に植林したという話が各地で聴かれる。

6)戦後の復旧のために、人工林も天然林も含めて木材を伐り出して木材を活用し、その跡地に造林をしてきた。天然林の森林を伐り、造林を行うと、結果的に拡大造林になる。

7)日本では様々な樹種がある中、スギが北は北海道南部から南は九州屋久島まで自生している。多様な樹種がある中で、木材として扱い易かったことから、スギが好んで植えられてきた。また、スギよりヒノキの方が珍重されて高値で売れることから、ヒノキの適地にはヒノキが植えられた。寒さの厳しい地域や高地ではカラマツ、海岸ではアカマツ・クロマツなど針葉樹が好んで植えられた。針葉樹は真っすぐに成長し、日本の軸組工法の用途には適していたと考えられる。

8)広葉樹は薪炭林として長く活用されてきたが、電気、ガス、石油等の家庭での活用が始まり、下火になっている。雑木林として残っている所が多い。

9)その他、竹林も農業などの資材やタケノコ生産のために植えられ活用されていた。西日本に多いが、放置された竹林が拡大して問題になっている。

 人工林は将来の可能性を求めて、いろいろな経緯があっての人工林である。傾斜の急な山岳林の日本の森林では、先人たちは多くのエネルギーを投下して、拡大造林を行ってきた。その努力の結晶が現在の人工林と言える。この半世紀、拡大造林が進み、造林の可能性のある場所は大体し尽くされたのではないかと考えられる。あちこちで、よくぞここまで植えたな~と思う急傾斜地の成林した人工林を見て感動する人も多い。

 他方、高度経済成長期には、他用途に使える可能性のある土地の森林は既に転用されたとも考えられる。今ある人工林の立木は先人たちの試行錯誤の努力の結晶と大切にしたいが、現在は木材価格が低いため、長伐期化の理由をつけて伐り控え、計画した伐期を過ぎて山の中に残されている人工林は多い。

人工林以外の森林

 森林から人工林を除いたその他の森林は全国的に見て図-3の国土の40%である。多くは天然林である。人里離れた奥山や標高の高い森林は無理して植林できない等の理由でそのまま残されている。また、標高の高い所の人工林では、生育状況が悪い所が各地で見られる。

目的によって対象の森林を限定して考えよう

 森林は考える目的により対象を限定して計画した方が成功すると考えられる。森林に関する計画その他は森林面積を基に考えることが多かった。しかし、これまで述べてきたように人工林面積が森林地域の産業の発展を考える場合重要ではないかとの考えに至った。森林が多い地域はもちろん人工林も多い。半世紀前の木材価格の高かった時代は、期待を込めて森林全体を先人たちは扱っていたと考えられる。しかし21世紀の現在は木材やその他の生産に活用できる森林は各地の現在の人工林と見て良いと考えるのである。

 他方、都市も含めた地域の住民に対する環境としての森林は、広い意味での森林の効用である。また観光地では、森林の景観が重要であり、こちらも広い意味での森林が対象になる。

 人工林は人間が植えたからには立木の密度管理など人間の森林作業が必要であるが、天然林は治山等の管理を必要とするが、人工林に比べると必要とする森林作業は少ないと言える。これは一般的に言われていることで異なる場合ももちろんある。

 適地適木、方法については色々な意見があるが、地域に住む地元の方が成功、失敗も含めていろいろと知識が豊富である。地元の経験を大切に産業を推進するのが賢明である。そして、現在の人工林は現在も将来も森林生産力の基盤と考えられる。

全国の人工林の分布

 全国各都道府県の人工林面積は、1位が北海道の約148万haである。2位は岩手県が49万haで、20位までが20万ha以上である。さらに23位までが19万ha以上であった。

 地方別の人工林の分布を見ると、図-4のように北海道が全国の15%、東北地方が19%、中部地方が18%、九州地方が14%と続き、ここまでの4つの地方で66%を占めている。人工林には有用な樹種の木材が蓄積されていると考えられる。また適切な管理が行われれば今後も成長していくと期待できる。

図ー4 人工林の分布

図ー4 人工林の分布

林野庁の考え

 国(林野庁)は現在の約1,000万haの人工林の内、660万haの人工林を育成単層林の経済林としたいと考えているようであるが、これは全体でのお話である。人工林の残りは育成複層林としている。

 2019年森林環境税と森林環境贈与税が施行されるため、森林の管理を進めることができる可能性がある。地域の人が地域の条件に合わせて地域のために地域の計画を作り実行してもらいたいと願うところである。
(参考:林野庁:森林・林業。木材産業の現状と課題、平成29年2月)

森林を人工林とそれ以外に分けて考えると地域産業を考えやすい

 そこで、森林と人工林の話に戻るが、森林のあるところは、(約2500万haの日本の森林は)全てが木材生産を行える森林ではないのである。標高の高い地域の森林があり、国立公園や国定公園であったり、観光地であったり、水源林であったり、保護林であったりと様々な用途に使われているところがある。森林の機能は単一ではない。しかし、観光地は観光地の森林の管理方法があっても良いように、目的とするものが地域によって違い、森林に期待する機能が異なって良いのである。

 先の人工林の話では、現在の人工林は地域の先人たちの知恵の表れであり、これを考慮することは大切であると考えられる。

 さて、森林面積で地域を捉えると、経済林として不利な条件の面積まで含まれることになる。そこで、人工林面積を地域の数字として捉えることを考えたい。森林面積ではなく、人工林面積を基に各都道府県の経済活動を見て行くことにする。

 先に2016年の木材生産量を地方別に集計したが、北海道、九州地方、東北地方の生産量が全国の65%であるが、その地域の人工林面積は全国の47%である。長野県、岐阜県の位置する中部地方は陣国の人工林の18%を占め、これからの木材生産が期待されると考えられる。

  • 2020.01.31
  • 田中

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