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栽培きのこ類生産と分類4について

[1] 分類4の4県
 MTANAKA方式都道府県森林生産力分類2016の分類4は1年の木材生産量が20万㎥以下と少ないが、栽培きのこ類生産額が20億円以上の県を分類している。

 MTANAKA方式都道府県森林生産力分類2016では、中部地方の新潟県、四国地方の香川県、九州地方の福岡県と長崎県が分類された。それに対し、2017年のMTANAKA方式都道府県森林生産力分類2017では変化があった。中部地方では富山県が分類5より加わり新潟県と2県になった。四国地方では、香川県が変わらない。九州地方は、福岡県の木材生産量が増え、分類2-1へ変更になり、長崎県だけになった。

 4県という数は変わらないが、富山県が加わり、福岡県が出て行くという結果であった。次に栽培きのこ類生産について話を進める。

[2] 栽培きのこ類生産について
 日本全体では、近年栽培きのこ類生産額と木材生産額は同程度であることを既に紹介した。そこで栽培きのこ類生産の生産地を見ると、木材の樹種が地域により異なるように、きのこ類の種類は県によって異なっている。

 個人的にはしいたけなどの生産の歴史のある大分県などが生産量も多く上位に位置すると予想したが、全く異なる様相である。後で、きのこの種類については紹介する。

 産出額での比較をすると、2016年と2017年のベスト10の都道府県は表-6のようになっている。
(参考文献:林野庁:森林・林業統計要覧)

表ー6 栽培きのこ類生産額ベスト10(単位:1,000万円)

表ー6 栽培きのこ類生産額ベスト10(単位:1,000万円)

 長野県、新潟県、北海道、福岡県、徳島県、静岡県、大分県、長崎県の順に1位から8位までは両年共変わっていない。そして、年ごとに全国の生産量の分布を図示したものが図-7と図-8である。

図ー7 2016年栽培きのこ類生産額のベスト10と分布

図ー7 2016年栽培きのこ類生産額のベスト10と分布

図ー8 2017年栽培きのこ類生産額のベスト10と分布

図ー8 2017年栽培きのこ類生産額のベスト10と分布

 1位の長野県は2年とも24%台のシェアで全国の約4分の1を産出している。2位の新潟県は同じく18%台であり、1位2位の2県の合計は2か年共全国の42.6%の生産をしている。3位の北海道は5%前後、4位の福岡県は約4.5%、5位の徳島県は3.7%、6位の静岡県は3.5%と変わらず、上位6道県の産出額は全国の6割近くになっている。さらに上位10道県の産出額は7割程度になっている。

 7位以下の2ヶ年を比較すると、7位大分県、8位長崎県は順位に変化はなかったが、9位以降は宮崎県、山形県、秋田県、群馬県、広島県、岩手県、香川県の7県が1年間に40億円以上の産出額を記録して競い合っている状態である。

[3] 栽培きのこ類の技術動向と種類
 栽培きのこ生産は様変わりしている。これからも生産技術は変わっていくと考えられる。原木しいたけの味に勝るものはないとの考えが根強くあるが、おが粉を利用した製品の品質向上も目覚ましいものがある。各県では毎年きのこ類の品評会が行われ、農林水産大臣賞等の輝く賞を受賞されている。一方、生産者の高齢化に伴い重労働の回避も重要になってきている。

 森林林業統計要覧では現在栽培きのこの種類が8種類出ている。生産額の多い順に紹介する。一年を通して出荷できる種類の方が流通に有利なことがきのこ類でも言えるようである。各きのこ生産について2017年の生産額が多い都道府県も紹介する。

1)生しいたけ
 しいたけは生と乾燥があるが、生しいたけは栽培きのこ類生産額の28%を占めている。生しいたけは、北は北海道から南は沖縄県まで全都道府県で生産されている。全国1位は徳島県で全国の生しいたけ生産の13.0%のシェアである。2位は北海道の7.5%、3位は秋田県の7.0%、岩手県、群馬県、長崎県、栃木県と続いている。
 
2)ぶなしめじ
 しめじの類は呼び名の変遷があったが、栽培されている物は現在「ぶなしめじ」と呼ばれている。 ぶなしめじは栽培きのこ類生産額の22.9%を占めている。1位の生のしいたけと合わせると50%を超える生産額を得ている。
 ぶなしめじは、生産している県としていない県があり、北海道、青森県などは生産量が無い。全国1位は長野県で全国の41.0%のシェアである。2位は新潟県の15.8%で、長野新潟の両県で全国の56.8%と半分以上である。3位は福岡県の8.7%、4位は香川県の5.7%である。

3)まいたけ
 まいたけは全国の栽培きのこ類生産額の13.6%である。新潟県が57.9%のまいたけ生産を行っている。2位は静岡県の12.5%、3位は福岡県の8.7%、4位は長野県の6.6%、5位は北海道で5.6%である。この5道県を合わせると91.4%、また中部地方の3県を合わせると77.0%のシェアであった。

4)えのきだけ
 えのきだけはまいたけより少し少ない13.0%の生産額である。1位の長野県がえのきだけの63.0%、2位の新潟県が11.7%のシェアあり、生産県は偏っている。3位4位は福岡県と北海道である。生産県は全国にあるが、作っていない県も多い。

5)エリンギ
エリンギは全国の栽培きのこ類生産額の9.6%である。1位の長野県は全国のエリンギの43.0%、2位の新潟県が同28.7%を生産し、両県で71.7%である。3位は広島県が8.0%と続いている。

6)乾燥しいたけ
 乾燥した椎茸は全国の栽培きのこ類生産額の5.0%である。全国各地で生産されているが、生産額は九州地方と四国地方に多い。全国1位の大分県は41.8%を占めている。2位は宮崎県の15.5%、3位は熊本県の7.7%であり、1~3位までの近隣3県で、全国の3分の2近くを生産している。4位は四国地方の愛媛県の5.8%である。

7)なめこ
 なめこは全国の栽培きのこ類生産額の4.3%で、生産が多い道県は北に偏っている。2017年のなめこの生産は、1位が山形県の全国シェア23.1%、2位は長野県の18.1%、3位は新潟県の17.4%であった。この3県の生産量と順位は年により競い合っている。4位は福島県、5位は北海道と続いている。

8)ひらたけとまつたけ
 ひらたけとまつたけの生産額は小さい。
 2017年のひらたけは新潟県が47.8%、長野県が22.1%を生産し、福岡県が9.6%の生産額となっている。

 栽培きのこ類生産に加えて、森林から採取する副産物であるまつたけの生産も紹介する。生産額の1位は岩手県で全国35.4%のシェアであったが、次点は長野県34.1%と同程度であった。3位は京都府と和歌山県が共に全国シェア7.3%となっている。

[4] 表-6の各道県の産物
 表-6の各道県の方から産物を見てみる。

1位の長野県はぶなしめじ、えのきだけ、エリンギが特に多いが全ての栽培きのこ類生産を行っている。

2位の新潟県はまいたけの生産が特に多く、ぶなしめじ、エリンギの産出額が多い。

3位の北海道は生しいたけ、まいたけ、えのきだけ、そしてなめこが多い。

4位の福岡県はぶなしめじ、まいたけ、エリンギ、えのきだけとなっている。

5位の徳島県は生しいたけの生産が多い。

6位以降では、静岡県はまいたけが多く、大分県は乾燥しいたけ、長崎県は生しいたけが多い特徴がある。

[5] 栽培きのこと森林の活用
 栽培きのこ類生産は森林内や森林近くの場所を確保し、ほだ木、おが粉、種菌などの材料を必要とし、生育のための技術が重要である。いくつかの生産現場を見学すると、気候的な適地や方位、風向き、立地など条件があるとのことで、機械の導入などの工夫が為され、6次産業化を図っているところもある。また、きのこの種類によっては収穫期に次々と成長するきのこに追われる作業とのことである。

 また、消費地との流通システムができていないと、需要供給のマッチングや製品をタイムリーに流すことができない。安定した生産量がある各都道府県は、すでに生産、加工、流通システムができていることを意味している。

 きのこの種類によって技術が異なり、地域によって森林の利用の仕方は異なる。生産量の多い県は様々な工夫をして現在の技術を修得し、産業として成り立っていると考えられる。森林からは、ほだ木や培養地となるおが粉の材料となる主に広葉樹の木材を伐り出し、きのこの生育場所を森林内に設定し、自然の恵みを利用したり、人工的な管理をしたりと工夫している。長い場合は数年の生育期間の生産を行っている。生産物であるきのこは、食品として新鮮さを必要とすることから、産業として流通経路の確保は重要である。

 MTANAKA方式都道府県森林生産力分類の分類4の4県は木材生産としては出材量は少ないが、栽培きのこ類生産を行い、今日的な森林の活用をしていると考えられる。特に、ほだ木等の材料であるクヌギ、コナラ等の広葉樹の利用は今後の森林経営や木材活用にも新たなアイデアが出されると期待される。他方、しいたけの生育場所としてスギ林などの森林は各地で利用されている。

[6] その他:コラム
 きのこ類は日本人の食卓に欠かせない食材である。東京に育った筆者はしいたけ、えのき、しめじ(ぶなしめじ)などを食べて育ち生活してきた。しかし全国には様々な美味しいきのこが存在するし生産されている。難しいのは、天然には毒キノコが存在することで、森林の中で珍しいきのこを見つけても怖がりの筆者は手が出せない物が多い。スーパーの店先で売られている物に新しい物があったりするとどこの県の物か気になる。しかしおいしい食べ方がわからず無難な生しいたけを買うことも多い。各地で美味しく食べている物を東京などの都市へ出荷すると美味しく食べていると出荷した方々は思うかもしれないが、買い物客はスーパーマーケットにたくさん並ぶ商品から選ぶため、なかなか選んでもらうのは難しい。消費者は忙しいため情報提供しないと新しい食材に挑戦してもらうことはかなり難しいことと思う。

 他方、消費者としては良い物を見る目を養い美味しいきのこを料理して食したいものである。良いきのこ、美味しいきのこはだんだんと解かるようになっていくように思う。また多くの消費者の見る目が高まれば生産者の励みになるというものである。

  • 2020.02.28
  • 田中

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