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木材生産量についての現在の余力

 現在の森林生産力について論を進めてきた。2020年の今日、コロナウイルスの脅威があり、地球上の全ての国が試されている。世界経済の変革期になることは誰もが予想しているだろう。森林を取り巻く諸事情もどのように変わるのか、エネルギー問題も含め不透明である。

 MTANAKA方式都道府県森林生産力分類では各都道府県の森林生産力の評価を行ってきたが、資源的にはどの都道府県に余力があるのかをここでは考えてみる。数字から見て行くので、現実には当たらないこともあるが、参考意見として読んでいただきたい。

[1]人工林面積
 木材生産の対象としては森林全体よりも人工林に絞って考えた方が妥当であることをすでに提案した。そこで都道府県単位の素材生産量と人工林面積の関係について問題にしよう。

 MTANAKA方式都道府県森林生産力分類2016では、年間の木材生産量が50万㎥以上を分類1に、20万㎥以上50万㎥未満を分類2とした。そして2017年も同様に分類したところ、2017年には分類1に13道県、分類2に15県が分類された。そこでこの28道県について、2017年の素材生産量と人工林面積について表-8を作成した。

表ー8 28道県の材積と人工林面積

表ー8 28道県の材積と人工林面積

 さらに、素材生産量を人工林面積で除した値を求めた。以下「人工林面積当たりの素材生産量」と呼ぶ。この値は全国では2.10㎥/haとなり、全人工林から平均して何㎥/haの木材を生産したかという意味である。簡単に説明すると、この値が成長量以上であると伐り過ぎ、成長量以下であると森林の材積蓄積量が増加するという値である。過去20年以上この値が小さく日本全国としては森林の木材の蓄積量が増えすぎてしまった状態になっている。

 森林の平均成長量は樹種により場所により地位(土壌などの良さを表す)により異なるが、筆者は大学院生時代に調査した経験から、関東地方のすぎ人工林で1年の成長量5~10㎥/haくらいを目安にすると良いと考えている。40年も前のことで、最近の研究ではもっと詳しいデータがあると考えられる。樹種毎地位毎にも細かいデータはある。しかし細かく調べることが今回の目的ではないので、1年の成長量5㎥/haを目安に論を進める。なお、自然の力を借りている森林経営は誤差や災害時のことを考え経営することが大切である。

[2]人工林面積当たりの素材生産量
 表ー8の28道県の素材生産量/人工林面積の数字を見ると最大の宮崎県は5.90㎥/ha、最小の三重県は1.07㎥/haである。分かりやすくするために図ー19を作成した。地方別に見てみよう。

図-19 素材生産量と人工林面積比2017

図-19 素材生産量と人工林面積比2017

1)北海道
 北海道の人工林面積当たりの素材生産量の値は全国平均より多いが、2.30㎥/haである。寒い地域であり本州と樹種が異なり森林の年平均成長量が少ないと考えられる。北海道の専門家の意見がほしい所であるが、森林を活用して成長を促していると考えられる。

2)東北6県
 東北地方はすでに紹介したように全6県が木材生産の盛んな県である。岩手県と秋田県の素材生産量が多いが、人工林面積当たりの素材生産量は秋田県、青森県、岩手県、宮城県が2.92から3.09と競い合うような数字になっている。条件の異なる地域であるが、各県とも努力の成果と考えられる。先程の5㎥/haにはまだ余裕があり、生産高の伸びる可能性はあると考えられる。岩手県と秋田県の素材生産量が多いことは人工林面積が多いことも影響している。

 福島県と山形県は前4県よりも少ないが、人工林面積当たりの素材生産量の数字を見ると、余力は十分にあると言える。人工林面積当たりの素材生産量による判断は地域の余力と捉えられる。

3)関東地方の3県
 2017年に分類1に入った栃木県そして分類2の茨城県と群馬県である。図ー19を見ると、茨城県と栃木県の人工林面積当たりの素材生産量が多く、それぞれ全国3番目4番目となっている。4㎥/ha近い木材生産を行っている。5㎥/haまで余裕があり余力を期待できる。この数字を見ると現時点でもかなり森林を活用し生産していると言える。群馬県は図ー19では少ないが、他の2県や近隣県との連携に期待できそうである。

4)中部地方
 中部地方は分類2に長野県、岐阜県、静岡県が入っている。人工林面積当たりの素材生産量の値は1.08㎥/ha、1.09㎥/ha、1.27㎥/haと全国平均に比べても小さい。生産量を伸ばす余力は十分にあると数字からは見て取れる。

5)近畿地方
 近畿地方は分類2に3県が入っている。素材生産量の多い順に、兵庫県、三重県、和歌山県である。歴史的に立派な林業地があるが、人工林面積当たりの素材生産量は1.27㎥/ha、1.07㎥/ha、1,09㎥/haと全国平均にも及ばない状態である。余力は十分にあるので、木材流通システムの開拓を図ってほしい。

6)中国地方
 中国地方では分類2に4県が入っている。素材生産量が多い順に島根県、広島県、岡山県、鳥取県である。人工林面積当たりの素材生産量は全国平均に届かないが、島根県は2㎥/haを超え、他の3県も中部地方や近畿地方の県よりも多くなっている。素材生産への余裕は十分有ると考えられる。

7)四国地方
 四国地方では分類1に愛媛県、高知県、分類2に徳島県が入っている。愛媛県は人工林面積当たりの素材生産量の値が2.48㎥/haと全国の値よりかなり大きい。まだ十分に余力がある。また徳島県は1.59㎥/ha、高知県は1.45㎥/haであり、こちらも資源としての余力がある。

8)九州地方
 九州地方は分類1に4県、分類2に1県が入っている。図ー19を見て解るように宮崎県は人工林面積当たりの素材生産量が5.90㎥/haと全国1高い。地域の森林資源の活用では最高である。また大分県は素材生産量では九州地方の3番目であるが、人工林面積当たりの素材生産量は4.20㎥/haと全国2位であった。熊本県は3.47㎥/haで全国5番目であった。九州地方は温暖で木の成長が早いことから余力があり、これからも増産が期待される。

 まとめてみよう。現在(2017年)の木材生産の生産力は大きく見ると、北海道、東北地方、九州地方が担っている。九州地方の宮崎県が人工林面積当たりの素材生産量が5.90㎥/haと全国1高いが、諸事情はあるがまだ余力はあると考えられる。各地の地元ではいろいろな事情があると予想されるが、地元の森林成長量の数値を参考に経営計画を立てることが大切と考えられる。

 余力のあることが確認できれば、木材の量だけでなく品質にもこだわる経営の模索が可能になる。地元や隣県の森林資源の余裕がわかれば、隣県とも協力して木材流通システムの発展につなげられるであろう。

 次回は木材価格と素材生産量との関係を見て行こう。

  • 2020.03.24
  • 田中

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