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各都道府県の森林生産力~改めて各県の森林生産力を見て行こう 1

 47都道府県はそれぞれ特徴があり、同じ条件のところはないと話してきたが、これから分類の結果を交えて紹介していこうと考えている。木材生産の盛んな地方は北海道地方、東北地方、九州地方であるが、それは後にして、中部地方の県についてまず紹介する。

 全都道府県の森林地域を見学した経験はあるが、どの県もその中でいろいろな地域がある。そのため、筆者の視点からの話であることを前提にお読みください。また、MTANAKA方式都道府県森林生産力分類の視点からの分析結果を中心に論を進めたいと考えている。どこの地域についても筆者の知識不足があるが、そこは補完して考えてください。

3-1 中部地方
3-1-1 長野県

[1]林業産出額と栽培きのこ類生産

日本の林業産出額が1位の長野県
 2016年も2017年も日本の林業産出額が1位だったのは長野県である。そして、森林を最も有効活用している県の一つと言える。一方、長野県の林業産出額の内、木材生産の割合が10%以下であり、栽培きのこ類生産額が90%以上になっていることから、木材生産の比重が少ない。そのため森林の有効活用度合が低いという見方をされることもあるが、それは当たっていないのではないかと筆者は考えるがいかがであろうか。

長野県は栽培きのこ類生産額が多い
 長野県は栽培きのこ類生産額が多く、全国の24%を占めている。その背景には農業生産の力が大きい。栽培きのこ類生産に向いた気候であり、消費地との位置関係が有利であることなどの条件が整っていることから、今後も大切に森林を活用し続けてほしいところである。

全国の栽培きのこ類生産について
 全国各地で木材生産の傍ら栽培きのこの生産を行っているのを見学することがあるが、栽培きのこ類生産が盛んな地域では、その規模は大きい。他方小規模に近隣の住民や都市住民を消費者として生産を持続することは個々の経営にとっては大切であり、地元の重要な産業である。特にきのこは種類が多くその流通は地域の生活に根ざし、地域の気候や慣習を背景とした生産物である。「森林地域の文化を大切にすることにもなると考える」との森林地域の方の言葉は産業として成り立つことと同様に大切な視点と教えられた。それは、森林からの「林野副産物採取」や「薪炭生産」にも通ずることである。

[2]長野県の森林

長野県の森林と人工林について
 長野県は木材生産量が少ないと言われているが、言われるほど少ないわけではないと筆者は考えている。ではなぜ木材生産量が少ないと思われるのかを考えて行こう。

 長野県の森林面積は全国3位の106.9万haである。森林率(森林面積/県の面積)は全国3位の78.8%であり、事実森林は多い。次に人工林面積は全国3位の44.5万haとこれも多い。他方、人工林率(人工林面積/森林面積)は全国平均が40.7%であるが、それより少し多い41.6%である。それは全国33位とかなり低い。人工林率の一番高い県は佐賀県でその66.9%に比較すると長野県の人工林率は低い値であると言える。前に話したように人工林率は地域の歴史によって作られているためである。長野県の人工林面積が多いのは、全体の森林面積が大きいためということになる。逆に、人工林以外の森林面積が多いことも事実である。標高の高い山岳が多く、登山の場や観光地として長野県の森林、信州の森林は有名である。

 標高の高い所が多いことが長野県の森林の特徴のひとつである。そのため、絶対値として人工林面積が多いと言ってもすぎの適地でない寒冷地が多く、寒いところでも育つからまつを造林樹種として選び植えてきた歴史がある。その結果現在は高齢となったからまつが木材として産出されるようになっている。「長野県はなぜからまつが多いのか」という疑問はこれで理解できる。からまつ人工林は半世紀以上の先人の知恵と努力の結果と見ることができる。

 前述のように長野県は人工林面積が全国第3位と多いことから、現在より多くの木材が生産できる可能性はある。しかし、森林地域の人々は栽培きのこ類生産や農業その他の産業に従事し、木材生産の活動をする従事者を増やそうとしても難しいことかもしれない。機械化等により、効率的な木材生産を長野県では積極的に採用しようとしている。それについてはこの後で紹介したいと考えている。地域で何を生産し森林地域に収入をもたらすのかを考えずにひとつの産業を鼓舞することは難しいということではないのかと。もし、森林地域に多くの収入が入る確度が高ければ別であるが、他産業が順調であれば人々の挑戦への期待は低くなるのも仕方がないことである。

[3]長野県の技術力 

長野県の技術力は高い
 近年、航空レーザー測量技術の発展と普及により、上空からの森林資源量と微地形などの調査が可能になっている。以前の森林伐採前の毎木調査は、屋外で行うためにコストがかかるだけでなく人の労力を必要とする調査であった。長野県では航空レーザー測量の調査を全県で実施したと聞く。森林のある一時点での地形と森林内の地物(建物等)と森林資源についてのデータが整備されたと考えて良いだろう。地形の変化は少ないが、変化する資源量についてもある時点での資源量は産業にとって拠り所となるデータである。以前の森林簿のデータは頼りにならないと言われ続けて久しい。それは調査から二十年以上の時間が経ち帳簿の数字と現実が乖離した結果であった。その点航空レーザー測量による調査結果は長野県の森林関係の経営にとっては頼れる数字を入手できたと言える。

 次に県を挙げて森林の教育や研究が進められている。資源量調査には長野県の林業総合センターをはじめ、信州大学、長野県林業大学校、北信州森林組合をはじめいくつかの森林組合、他機械関係の企業などの協力体制がある。さらに信州型のスマート林業を目指しての研究普及活動が活発である。最近は地上レーザー測量やドローンの活用も進んでいる。ICT活用を含めて技術的に進んでいる県である。

 他方、県産材については長野県、森林組合、木材協同組合、製材工場などが協力して活動している。塩尻市の製材工場建設やバイオマスエネルギー工場などを計画して木材生産関連の産業を発展させようとしている。

現在の木材生産についての商習慣

 しかし、現実には木材生産量は年間50万㎥未満のため、MTANAKA方式都道府県森林生産力分類2016と同2017のどちらも分類2に入っている。これまで説明してきたように、このレベルは今の森林生産力として確実に実行できるところである。そして簡単にはそれ以上にならないことについて私見を述べてみよう。

 木材生産について長年調査対象としてきたが、森林地域では物を作ることは積極的で、いろいろなアイディアが出て来る。しかしそれを消費者に購入してもらい消費してもらうところまでフォローしないという商習慣に慣れているようである。この場合消費者は地域住民や広くは国民になるが、長い間大工や工務店が消費者だという考えが定着して林業が行われてきたため、そのまま気付かない傾向があるのだろう。

 作って並べるところまでは技術力があり行うが、その後の営業や消費段階にまで立ち入って、消費者サイドに貢献することを考えないのかもしれない。それは森林地域と多くの消費者の住む都市が遠距離の関係にあるから歴史的には仕方なかったと考えられる。この4半世紀営業関連のことを森林地域でお話すると、あまり手ごたえが無くそれ以上押すこともできず、自分の非力を嘆くばかりであった。しかしマーケティングの考え方が広がった20世紀を過ぎ、21世紀には消費の場面を考えずに物を生産しても長続きしないのではないか。森林地域近くのニーズにまず応えて行くことが重要と考えるがいかがか。これは長野県だけの問題ではないのである。

[4]長野県の木材生産量と森林資源量について

長野県の木材生産量について
 木材生産の産出額について長野県は2016年43.5億円(全国17位)、2017年47.4億円(全国15位)であった。これに対し、木材生産量は2016年44.2万㎥(全国14位)、2017年48.2万㎥(全国14位)であった。前に紹介したように、からまつが多く、すぎ、ひのき、からまつも産出されている。

 長野県の人工林面積が44.5万haであることを紹介した。樹種により、標高により色々な条件があり、人工林にどのくらいの材積の成長量があるのかを積み上げて計算したいところである。しかし長野県全体としては仮に1年に5㎥/haの材積の成長があるとすれば、現在は5分の1しか産出していないということになる。長野県の人工林には3倍から5倍くらいの木材が産出されても良い潜在的な生産力はあるのではないかと推察される。木材の蓄積量を積み上げた数字ではないため概算であるが、更なる増産の可能性はあると言える。しかしこれまで説明してきたように、簡単に人は集められず実現は難しいことである。

 MTANAKA方式都道府県森林生産力分類2016および2017では長野県は分類2の栽培きのこ類生産が盛んな分類2-1に入る。1年の木材生産量50万㎥を境界にしたため近々分類1に入る可能性はある。その場合、県産材を使って消費してもらう有効な方法すなわち現在のライフスタイルに合わせた商品開発とそのサプライチェーンができれば持続性のある産業になると考えるがいかがであろうか。

 森林の蓄積の生産量については今後他県との比較で考えていきたい。

 次回は同じく中部地方の分類2の岐阜県の森林生産力について話を続けていく。
(続く)

  • 2020.05.30
  • 田中

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