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各都道府県の森林生産力~改めて各県の森林生産力を見て行こう10

3-1-10 中部地方の各県の木材生産

[1]中部地方の森林の活用と栽培きのこ類生産
 中部地方の9県についてデータを中心に森林生産力を見てきた。中部地方のどの県も長年それぞれの森林の有効活用を目指してきた。現在木材生産量こそ少ないが、各々の経済条件の中で自県の強みを活かしている所が多い。

 2017年の数字で話を進めるが、既に紹介したように、林業産出額全国1位の長野県、3位の新潟県、そして10位の静岡県がある。3県とも栽培きのこ類生産での上位の県である。栽培きのこ類生産額の全国1位の長野県、2位の新潟県、6位の静岡県である。栽培きのこ類生産は森林の活用としてひとつの産業形体と考えられる。全国的に多種類のきのこが栽培されているが、大都市の消費地が近い地の利を活かし産業を育ててきた結果である。日本人の食文化に根ざしたきのこの生産を今後も継続することを期待したい。

[2]中部地方の木材生産
 他方中部地方各県の木材生産量はあまり多いとは言えない。木材生産産出額を見ると、2017年全国13位の岐阜県、15位の長野県が多い県である。木材生産量でも長野県(全国14位)、岐阜県(全国16位)と生産しているが、50万㎥未満とあまり多いとは言えない。

 また継続的な木材生産の基となる人工林面積は、全国3位の長野県が44.5万ha、全国6位の岐阜県が38.5万ha、全国9位の静岡県が28.0万haと多い。仮に毎年5㎥/haの成長を想定すると、この3県はそれぞれ140万㎥から200万㎥の生産ができる可能性がある。現在の森林資源では質量の両面を考えると難しい場合があるが、潜在的には地域としての森林生産力は高められる可能性があると期待できる。

 しかし、現状はその実現に遠いのはなぜかと考えると、中でも限られた条件である人材を増やすことは簡単ではないということである。立地条件の良さと他産業が盛んなことから、短期間での木材産業の成長は難しい現状がある。車道網整備が進んだ現在は機械化による代替は可能であるが、農業他の産業と違い毎回作業場所が異なる木材生産は技術的にその推進が他産業ほど順調にはできないのではないだろうか。

[3]樹種について

ひのきの生産
 長野県と岐阜県の木材生産産出額と木材生産量の全国での順位が逆転している。これは地域によって気象条件等が違い、生育できる樹種が異なっている。中部地方の各県の内、岐阜県、静岡県はひのきの生産量が多く15万㎥程度、長野県、愛知県はそれに比べると少ないが5万㎥程度、その他山梨県、石川県が1万㎥程度となっている。日本ではひのきはすぎよりも珍重されてきた。そのため木材価格が高かったので植えられる場所にはひのきを植えようと先人たちが努力してきた。その結果育った木を今日伐って利用できている。木材の単価が高ければ少量の伐採でもコストに見合うことから、各地で作業単位が少量のひのきの産出が行われている。

 岐阜県と静岡県は現資源量でも木材生産に有利と言える。このようにひのきが生産できる地域では、小さな単位の生産ができる条件があり、ひのきの流通加工そして消費は大切にしたい。逆に地域全体で大規模な産業を開発したい場合にはひのきを区別しそれ以外のところでの推進が考えられる。ひのきの産地とそれ以外では条件が異なるということである。ひのきの単価も下がった現状ではあるが、長年価値の高いと評価されるひのきの流通は、今後も現状を保持して消費者につないで活用してくれる工務店等を広げていくことが木材を評価し価格を支える方法ではないかと考えられる。

すぎ、からまつ、その他の樹種
 すぎは古来我が国の建築を担ってきた。また北海道南部から九州まで広く自生している。中部地方では、岐阜県と静岡県は20万㎥前後の産出量があり、他県も生産している。あかまつくろまつは長野県が5.8万㎥、山梨県1.9万㎥、富山県、石川県と続いている。量的に少ないあかまつくろまつについては、松くい虫の被害も考慮する必要があるが、マーケティングを積極的に行うことで、需要拡大につなげることも考えられている。

 からまつは長野県の生産量が24.7万㎥(全国3位)と多く、中部地方では山梨県と岐阜県が1~3万㎥産出している。長野県ではすぎの植えられない寒冷地にからまつが植えられたが、樹齢が高くなり材質がようやく認められて、流通が促進されてきている。

 分類2の3県のうち、長野県と岐阜県はかなり生産量が多くもう少しで50万㎥の線を超えると分類1になる可能性がある。木材サプライチェーンの核になれる可能性があるが、前から述べているように簡単に人を増やせないことから、この両県の協力体制も大いに考えられる。また、静岡県は分類2であるが他産業が盛んなため木材生産に多くの力の投入は難しいのではないかと考えるが、ひのきを中心に愛知県、岐阜県、近畿地方、関東地方と協力の輪を広げての地道な発展が現実的のようである。

中部地方の協力の可能性
 中部地方の木材生産に関しては分類3、分類4の6県は独自で地道に続けていくと考えるが、道路網が整備された今日は、隣県との協力によって、近隣の消費者の住宅をはじめ産業への木材供給体制を作ることで、木材の有効活用につなげられると考えられる。

品ぞろえのために
 ある程度の品ぞろえがなければ今日のサプライチェーン構築は難しく、旧来の時間をかけての木材生産流通加工後の提供では他地方の木材や、木材以外の資材との競争に負けてしまう現実がある。簡単なことではないがそこでは情報技術を活用したマーケティングを推進させたいところである。

 山梨県は現在の木材産出量は多くはないが、大消費地に近い立地である。それを活かしたマーケティングを行い、他県との協力する体制を作ることも考えられる。

 日本海側の新潟県、富山県、石川県、福井県はそれぞれ厳しい環境の中、木材生産を続けている。安価ではあるが、バイオマスエネルギーとしての木材の活用も近年可能になってきた。そこで独自の産業の発展を志向することを考えるが、資源量を人工林面積で類推すると、長期には他県との協力を基に発展を目指すのがお互いの為になるのではないかと考えられる。

 現在は道路網があり、効果的な林業機械が出現し、さらにインターネットによる広域での情報の活用が可能になった。それらの技術を使い木材生産の流通加工や市場としての品ぞろえを整え、需要に応えられる産業作りが可能になっていると考えると、人材不足を補いながらの近隣地域での協力体制を作ることで発展ができるのではないかと期待するところである。

 MTANAKA方式都道府県森林生産力分類2017の表は近隣県との協力体制を築くための参考にしてもらいたいと考えている。ここに、MTANAKA方式都道府県森林生産力分類2017を再掲示しておく。

再掲の表ー4MTANAKA方式都道府県森林生産力分類2017

再掲の表ー4MTANAKA方式都道府県森林生産力分類2017

  • 2020.07.23
  • 田中

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