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地域の森林生産力を発展させる方策について1

[1]MTANAKA方式都道府県森林生産力分類の分類1
日本の47都道府県の森林の活用は様々です。森林生産力を考え易くするためにMTANAKA方式都道府県森林生産力分類を考案しMTANAKA方式都道府県森林生産力分類2016と同2017を作成しました。これは21世紀の2016年と2017年の各都道府県の森林活用について見ることができます。またこの分類を考える過程で、経営の条件を変化させても森林生産力を急に増加することは難しいことと森林生産力は現在の地域の力が評価されるひとつであることが解りました。

木材生産(統計では素材生産量と言われる)について年間50万㎥以上の道県を分類1(分類1-1と分類1-2)としましたが、それらは人口の多い都市部から遠方に位置しています。MTANAKA方式都道府県森林生産力分類2016では北海道地方、東北地方、九州地方そして四国地方に多く、同2017では前記地方の12道県に加え関東地方の1県、更に同2018では中国地方の1県が加わりました。先に述べたように人口の多い都市部から遠方の道県です。

以前に掲載したMTANAKA方式都道府県森林生産力分類2017を再掲します。

再掲の表ー4MTANAKA方式都道府県森林生産力分類2017

再掲の表ー4MTANAKA方式都道府県森林生産力分類2017

森林の木材資源は計画的に運営すれば持続可能な資源となる長所があります。また自然環境の力を借りて40年50年後の木材資源を計画的に育てることも可能です。他方40年50年後の木材需要予測は一般的に難しいことです。半世紀前までの木材資源が建築材料として貴重な時代には現在ほど需要予測は必要なかったかもしれません。しかし、需要予測は難しくても、計画的に質量ともに次世代が使いやすい資源の育成を調整できることは育林の実行可能な技術であります。

[2]分類1の道県には何があるのか
まず分類1の道県について考えます。

年間50万㎥以上の木材生産可能な森林生産力のある分類1の道県には何があるのかを考えます。地域に木材資源があるだけではなく、森林から木材を伐り出し、丸太に採材し、丸太を素材市場や製材所に輸送し、製品に加工し、そして木材の消費者に届けて消費してもらうところまでの流通加工システムが存在し、年間50万㎥以上の木材生産が可能になっていると考えることができます。

現在の木材生産量を支えるヒト、モノ、カネ、情報活用が整っていると言えます。生産量を急増させることは難しいことですが、生産量を維持し増産することは可能でしょう。そこで、分類1の道県が将来どのように地域を発展させるかを考えてみます。現在生産量が多く将来も木材の生産額を増やし発展することは、日本の木材生産業の指導的存在すなわちリーダーと言えます。各都道府県の人工林面積を考えると、木材の生産量が予想成長量より多いという伐り過ぎの所は無いと考えられるので、この点は置いておきます。

今日日本各地では大型製材工場の建設が進んでいることと、バイオマス発電所の開設が進められていることから、全国的に木材需要の増加は予想されます。そこで、産業の成長を目指すことを考えてみましょう。いくつかの方策を提示します。

[3]分類1の道県の増産に向けての方策
以下、a)からg)までの7つの方策を説明します。

a)効率化をさらに図り、コストを下げる
効率化を図り、コストを下げることは従来から行われている改良方法です。分業の進んでいる木材生産業では多くの工程で機械の導入が進められました。効率化も図ってきました。森林地域の林内の路網や、一般道や全国的な高速道路の車道網は今日インフラとして産業を支えています。効率化のための機械化は何十年も各地で導入され改良されて現在があります。ICTを活用してこれからも努力は続けられるでしょう。しかしこの点だけに着目しての今後の発展は難しいと考えられます。

b)生産物を分類して、市場や製材所のニーズに合わせたものを供給し、収入を増やす
生産された材を分類して、市場や製材所のニーズに合わせたものを供給し、収入を増やす方法が考えられます。森林の伐採現場から出材される木材は工業製品と違って同質ではありません。用材として活用されるA材からバイオマスエネルギーに使われるD材まで、曲がりなどの形状や太さによって分類されてきました。また樹種、年輪幅、色、樹齢など様々です。さらに各要素の境界は連続的でくっきりと線が引ける訳ではなく目利きには熟練が必要です。

40年程前は、木材の質を見極め挽いて良い製品になる木材は高く売ることができました。その時代は高価な資源として木材を大切に加工したのでした。1980年以降平均して木材価格が下がり、大きな木材を扱うため、きめ細かな分類などに気を使うことなく効率的な短時間での作業を推進してきたと考えられます。一部では、山土場で分類している所がありますが、一般的に林内や土場からトラックで素材市場に持ち込み椪積みにして競売しているところが多く見られます。

嵩張る木材を分類するには場所が必要であり、コストがかかり、作業を必要とし、コストに見合わないとして積極的に導入されなかったと考えられます。しかし良い材を高く売るための工夫をしても良かったのではないでしょうか。40年前木材関係者のだれもが気にかけていた材質の知識は現在一部を除いて忘れられています。ICT活用の進んだ今日は写真を撮り分類することが可能になり、データをリンクすることもできるようになりました。今日的な質の違いを模索したいものです。

20世紀最後の頃、製材工場で良い材が選り分けられて活用されていると良いがと個人的に考えたことはありましたが、製材工場の大型化、そして高速機械の導入が進み、そのようなきめ細かな選別作業を製材工場に期待するのは無理なようでした。そうなると、立木が伐採された時点で丸太を選別しなければそのまま流通に乗ってしまうことになります。コストを考慮する必要はありますが、定期的に再考することで、生産した木材の価値を高めることはできます。「もったいない」という考え方の応用です。

生産物を分類することで供給先の信用を高めることができる可能性があります。2021年のウッドショックはそのチャンス到来になるかもしれません。

c)消費者を意識して、納入先と経営を改善させる
「消費者を意識して、納入先と経営を改善させる」こととは、営業手法の応用です。木材を扱ってきた林業は高度に分業が進み、森林経営だけでなく川上に位置する経営体は消費者の声を聞く機会が得られませんでした。出荷した木材の製品がどのように使われているのか、どのように改良すれば良いのかなどの材料となる情報は消費者に近いところに集まります。

営業手法の応用と紹介しましたが、品物やサービスを納入する時に、より消費者に近い需要者(納入先)の話を聞いて問題を発見し一緒に解決に向けて歩むことを考えています。直接関わっている需要者の話は容易に理解できます。それに加えて商品の納入先の現状を教えてもらうと何が問題なのかを発見できます。納入先は「そんなもの」と気にしないことも、見る角度が変われば改良に繋げることもできます。木材の流通ではどこかに解決策を見つけなければ木材の有効活用の改良は難しくなります。

自然の産物である木材について、納入先ではどのような加工をしているのか、分類し製品化して川下の業者に納入しているのか、どのような苦労があるのか、流通の川下の方からの要望など、時代と共に変化していることを共有することが問題発見の第一段階です。産業を支えるために面倒がらずに何か一緒にできないかを考えるようになれば前進できます。

例えば大きさや品質などで従来と異なる分類して納入することによって、納入先の加工での歩留まりが良くなることはあります。不要になった規格の物は無駄になるので作らないとか、品質についての注文に配慮することで、納入量を増やすことができることもあります。需要者の無駄を省き、ロスを少なくすることは大きく見ると効率的な資源活用につながります。人と人の信用にも関わります。このような変更は工数とコスト増大との兼ね合いで経営サイドの判断になりますが、長期的に見て効果が期待される場合には試験的実施は意義があります。

多くの工程で問題発見し、そして問題解決の活動ができれば現状より良くなるはずです。問題発見で、まず一歩前進しましょう。

d)新しい用途開発に心掛け、消費者のライフスタイルに合わせる工夫をする(新規開拓1)
ビジネスの効率を上げるために、今まで通りの製品を作り納入してきました。しかし都市をはじめ消費者のライフスタイルは変化しています。より川上在住の経営者も消費者のひとりではありますが、住宅関連のニーズの多い木材を消費者として頻繁に購入するわけではないため、その変化を追いかけるのは難しいことです。家を建てる経験をして初めて気づくことは多いものです。地域によっても異なります。

分業の高度に進んだ木材生産業は流通全体が見えなくなっています。筆者は木材トレーサビリティシステムを切り口に森林地域の産業活性化を考えてきましたが、木材生産に関わる人は森林経営者から消費者まで細かく分けると9つに分かれていると言えます。ここまで細分化されると、全体を見渡すことは難しくなります。消費者や商品のことを考えると建築士や工務店の方に全体を見渡してもらいたいところです。しかし建物の種類の多さや日本全国を考えると簡単ではありません。建築士は人数も多く、人により考え方や知識が異なります。木材の活用に積極的な建築士の方に考えてもらいたいですが、すぐには難しそうです。

現在は製材工場が木材の乾燥とプレカットも行い、建築現場への納入をしています。この半世紀に木材の乾燥に関する技術は進歩し、ICTによるCADシステムを導入してプレカットを製材工場で行うなど変化しました。分業の進んだ木材生産業では製材工場の関係者が森林のことも消費者のことも理解できる立場にあると考えられます。森林のことも含めて中長期の国民の生活を考慮した計画を立て、推進してくれると良いと筆者は期待しています。

木材の流通では様々な立場がありますが、関連するところの効率が上がるように助言し合い、木材の消費者である国民の生活を支えるように努力すると、大切な資源である木材の今日的な高度な活用が進むのではないでしょうか。

e)都市の生活の変化への対応を考える(新規開拓2)
学術的には木材の様々な利用を模索しています。最近は化学的に木材をセルロースとリグニンに分けての利用の研究が進み、セルロースナノファイバーなどの話題が多くなっています。森林地域でも期待している人は多いのですが、広い地域での生産は未だのようです。このような場合、木材だけでなく農産物などとの競争になり、品質その他での比較も行われます。この面での森林地域の活躍はこれからということです。

他方、物理的にはCLT(Cross Laminated Timber)が話題になっています。木材の強度を高められる集成材の作成技術は半世紀培われてきました。それを直交集成板の面の板にしたCLTの活用が進められています。そしてビルの建設にも使われ始めています。これは学校などの公共施設の建設に使われるようになりました。今後のCLTの活用に期待が寄せられています。

a)からe)までは、従来の方法に、営業の手法、そして新しいニーズを紹介しましたが、f)は営業の規模拡大を考えています。

f)経営規模の拡大のために近県の状況を調べ、お互いに余力があれば一緒に活動していく
21世の新しい製材工場は大型化が進んでいます。規模を拡大した経営が求められます。それは複数の経営が協力する形でも効果は得られます。森林地域では面積の広いことは長所ですが、距離としては遠方になり、それが経営にとっては短所となることも多くありました。21世紀の今日は道路網が整備されICTを活用することで協力することが可能になっています。各地では森林組合の合併が進み広い地域を担当するなど、地域全体のリーダーとして活躍するところも出ています。森林組合だけでなく篤林家や伐出業の経営者なども多く出ています。

規模を拡大することは、需要に柔軟に対応することを可能にできます。ICTを活用して様々な段階の在庫管理や情報管理を行うことで生産物を無理なく無駄なく効率化を図ることができるはずです。

そこで、木材生産の状況を評価したMTANAKA方式都道府県森林生産力分類を活用し隣県と協力することを検討し、効果的な協力体制を作ることができます。分類1同士であれば信頼関係を築いた上で、協力のしどころを相談し互いにメリットのある関係を築けば今まで以上の生産を目指すことができます。

自県が分類1で隣県が分類2の場合には、信頼関係を築いた後、一緒に協力することで、規模拡大のメリットを受けられるはずです。大規模になれば生産物の種類を分けての活用もできます。またチップやバイオマスとしての販売量をまとめることが可能になります。それには信頼関係と地域拡大による輸送費などのコストを考慮する必要がありますが、一度の検討結果で諦めるのではなく、後日再度検討を重ねると良い案が出てくる可能性があります。

g)木材についてPRし、新しい商品開発を行う
隣県の年出材量が20万㎥以下の分類3や分類4の場合、仲間に入ってもらうことで、小規模ですが隣県の森林環境の整備に役立つことができます。年出材量が10万㎥未満の分類5の都府県の場合には特に森林環境整備の役に立つことになり、都市との交流にもつながります。森林と遠く離れた生活をしている人々に森林情報やレクリエーションなど多くのサービスを提供することができます。

最近では都市近郊の森林での森林ボランティア活動や、教育関係の森林教育が盛んになってきました。木育等を通して国民に森林の良さや木の良さに気付いてもらえることは有意義です。

木材トレーサビリティシステムの研究活動を通して、国民の生活環境での木材の活用の重要性を認識することができました。この点については他の情報に任せますが、木材離れしていた人のライフスタイルに合わせて木材を提供する方法を都市の人や若い世代も一緒に考え活用方法や新しい商品を開拓したいものです。森林地域のためだけでなく都市住民も含めた国民の健康的な生活に役立つ木材製品の開発を目指したいと筆者は考えています。若い世代の新しい意見も出してもらいたいところです。

次回は分類2他の県の話を中心に進めます。(続く)

表の引用:田中万里子:森林生産力を地域の総合力として評価しよう~2017年の各都道府県の森林生産力~

  • 2021.06.11
  • 田中

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